去年の11月1日に父が老人施設に入って
ちょうど半年経過した昨日(4月の後半)に
鹿児島に帰省した。
母と相談して父には内緒にしていた。

「帰ってくると伝えたらまだか~、まだか
 と煩いだろうからね。。。
 突然、目の前に表れたらどんな顔をする
 かねー?」

施設での暮らしぶりはどんな様子なのか、
その場に馴染めているのか、
自分の目で見るまでは不安だった。

帰省当日は朝の04:00に起床、成田発08:00
の便に搭乗、11:00少し過ぎには鹿児島実家
に到着。

昼飯を母と食べて早速、歩いて5分の施設に
向かう。窓越しに集会室に座っている父の
姿がカーテンレース越しに見えた。

施設の職員さんと挨拶を交わして黙って
父の隣の椅子にそっ、と座る。。

宙に目が彷徨い呆けているお年寄りの中、
ひとり桜島の水彩画を一心不乱に描いてい
た。。

「お父さん、、、おとおさーん!!、、」

やっと絵筆を持つ手の動きを止めて私の方
を見つめる事、数秒。。

「めぐみ!?、だがねー!」

息子の顔はすぐ思い出してくれた。
去年の年末、妹の顔をなかなか思い出さな
かった、という話をきいており、やれやれ、
なにはともあれ良かった、良かった。。

それから4日ほど毎日午後に施設に足を運び
車椅子に乗せて実家に連れて帰ったが、
自分の家に戻ってきたという感慨深い思い
は持っていない様子だった。
施設では16:30から夕食が始まる。
一旦実家に入ると施設に戻りたがらないの
ではないか、と心配していたが、そんな
こちらの危惧も取り越し苦労。。

自分から時計を見上げて時間になると

「戻る・・」と言ってきた。

「おやおや。。。」

母と顔を見合わせて苦笑するしかなかった。

施設に戻る時も左折しようとすると、

「ちがう、、右…」

と言われ、どこに向かう事になるのやら、、
と半ば呆れていたら、細かく指示を出して
ちゃんと施設に到着。。

「本当にボケている?」

私が描いて送った油彩画に対しても真っ当
な指摘を出してくれた。

「こっちの絵は全然だめ・・」

「がく。。」

千葉に戻る日は父の入浴の日。慌ただしい
状況の中、父に別れの言葉を充分にかけら
れる事なく戻ってきた。

母に千葉到着の電話を入れると

「めぐみはもう着いたかねー」

と聞いていたらしい。。

施設に入って随分としっかりしてきた感じ
を受けた。すっかり馴染んでいる様子だっ
た。父が描いた水彩画をコンクールに出
そうという話も持ち上がっていた。

とても安らかで充実した毎日を送っている
様子を見る事ができて一安心。

施設の職員さんにも感謝!の一言。

ただ、幼児化は進んでいた。

「さいた、さいた、チューリップの花が…」

と調子外れの音程で歌い始める。。

あの寡黙だった昔の父はもうどこにもいな
い。
父の歌声を聞いていて一抹の寂しさを感じ
てしまった。

時は無慈悲に過ぎ去っていく。。



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